僧侶は本来「無所得」と言いまして、自分の持ち物は持たないことになっています。
それは何故かと言いますと、仏教に於ける悟りに対して欲望が邪魔をするからなのです。
欲望の中でも物欲は、物が欲しい、もっと欲しい、人よりも良いものが欲しい、と限りなく心を乱し続けて、満足することがないからであり、心は欲望に支配されてしまって、大切な事が見えなくなってしまうからなのです。
ですから僧侶は何ももってはいけないけれど、唯一持つことが許された物があってそれは「三衣一鉢」と言いまして、主義用をする時に着る衣と托鉢をする時に使う鉢のみなのです。
その衣にしてもゴミ捨て場から拾ってきたものだけが許されて、自分で縫って造るので糞掃衣(ふんぞうえ)と言いまして、動物の糞を掃除する時に使うような布切れで作ったものなのです。
物は持てば持つほど物欲に支配されるようになり、そのことしか考えられなくなり、正しい目で見ることが出来なくなってしまうのです。